「…フェルドはもう…この世にはいない」

 マドルスの言葉を聞いて、スタルス達は驚いている様子だ。
 ただスタルスだけは、悲しむ二人を余所に、どこか嬉しそうな表情に変わっている。

「…兄さん、死んだんだ」

 スタルスは、どこか嬉しそうに言った。

「…あぁ…リアンが小さい頃にな…リアンは母親も幼い頃に亡くしていて、今までずっと…フェルドの親友の方が…育ててくれてたんだ」

そう言ったマドルスは、どこか苦しそうだ。

「…まぁ」

 ジェニファとジュリエは、悲しそうにマドルスの話を聞いている。

「…わしが死んだら…リアンを育ててくれんか?」

 マドルスは、許しを請うような視線を、スタルスへと向けている。

「…兄さんの親友の方に返せばいいじゃないですか」

 スタルスは冷たい視線をぶつけ、物を返すような軽々とした言葉を吐いた。

「…その親友の方も、お亡くなりになった」

 マドルスの苦しそうな表情の中に、涙が混じり始めた。

「…困りましたね、育てると言われましても」

 冷たい視線を送り続けているスタルスは、とても困っているようには見えない。
 マドルスは両手を付いて、ベッドから降りようとした。しかし、マドルスはベッドから転がり落ち、床に体を叩き付けてしまった。

「お義父様!」

 ジェニファとジュリエは、マドルスに駆け寄った。

「…ありがとう」