「…なんですか?」

 スタルスはマドルスから視線を外し、自分の両手に嵌めている白い手袋を見詰めながら尋ねた。

「おじいちゃん」

 その時、学校を終えたリアンが、マドルスの部屋に入ってきた。
 マドルス以外の三人は、リアンのことを不思議そうな顔をして見ている。

「スタルス…フェルドの息子のリアンだ」

 そう言ったマドルスは、起き上がろうとした。

「えっ!?」

 それまで冷たい表情を浮かべていたスタルスの顔が、見る間にどこか怒りのこもった表情へと変わった。

「…兄さんの子供?」

 確かめるようにそう呟いたスタルスの目は、明らかにリアンを睨み付けている。

「…お義兄樣に子供がいらっしゃったのですか?」

 ジェニファは戸惑いながら、マドルスに尋ねた。
 どうやら皆、知らなかった様子だ。

「…わたし、ジュリエよろしくね」

 ジュリエは、にこやかな顔でリアンの前に右手を差し出した。

「…うん」

 リアンは戸惑いながらも、ジュリエと握手を交わした。
 戸惑うのも当然だ。
 リアンは、この娘の正体を知らないのだ。