「…パパは許してくれてたよ…だっていつだって笑顔だったもん」

 リアンの言葉を聞き、マドルスは頭を床に付け、嗚咽を漏らした。

「絶対、許してくれてたよ!」

 マドルスにしがみついたリアンの瞳にも、マドルスと同じものが流れている。

「…ありがとう」

「…僕も、ありがとう」

 リアンは涙を拭きながら言った。

「…なんで、わしにありがとうなんだ?」

「だって、僕の大好きなピアノ教えてくれるもん」

「…まだわしにピアノを教わりたいのか?」

「…うん。僕の夢はピアニストになることだもん。これからも教えてね」

 答えを聞いたマドルスは、そのか細い腕でリアンを抱き締めずにはいられなかった。
 それから改心したマドルスは、リアンに対して怒る事はしなくなった。
 ピアノを教える時も、分かりやすく丁寧に教え続けている。
 そんなある日、マドルスは最近リアンが元気のないことに気が付いた。

「…どうしたリアン?なんか学校であったのか?」

 夕食の席で手を止めたマドルスは、俯きながら食事をするリアンを心配そうに見詰める。