絵の前で立ち止まったマドルスは、ゆっくりと跪く。そして、街の中で笑顔で遊んでいる三人の親子が描かれたキャンパスを、マドルスは跪きながら見上げるようにして見続けた。
 その跪く姿は、何かに対して謝罪しているように見える。そして、ようやく立ち上がったマドルスは、リアンに語り始めた。

「…リアン…わしは昔、フェルドの夢を踏みにじった…しかし、歳を取るに連れ…わしは許されない過ちを犯したことに気付いたんだ」

「…うん」

 リアンはマドルスの顔を真剣に見詰め、耳を傾ける。

「…わしは、もうすぐ死ぬ」

「…えっ!?」

 リアンは目を見開き驚いた。

「…わしは不治の病に侵されているんだ」

「…不治の病って、治るんでしょ?」

「…いや、もう永くはないだろう」

「……」

 口を閉ざしたリアンの目から、涙が溢れた。

「…わしは病にかかったと分かり、フェルドに頭を下げないまま…死ねないと思ったんだ…しかし、謝っても許してくれるはずもない…だからわしは…人など雇わず、自分だけの力でフェルドを見付けることができれば…きっと許してもらえると、勝手に望みを掛けたんだ…しかし、生きてるうちには会えんかった…わしは許してもらえんかった」