マドルスは、リアンの部屋のドアをノックした。しかし、リアンはドアを開けなかった。

「…リアン、すまなかった」

 ドア越しに聞こえたその声に、リアンはドアをゆっくりと開け、顔を出した。

「…すまなかった」

 マドルスの目には涙が浮かんでいる。

「…うん」

 リアンは、マドルスの涙を見て戸惑った。

「…リアン、中に入ってもいいか?」

「…うん」

 部屋の中に入ったマドルスの瞳に、壁に飾られている一枚の絵が写り込んだ。
 マドルスは更に大粒の涙を流し、顔をしわくちゃにして、リアンに尋ねた。

「…この絵は、フェルドが描いた絵か?」

「うん、パパが描いた絵だよ」

 マドルスはずっと聞きたかった答えを聞いて、さらに涙を流した。
 マドルスは、リアンの部屋に飾られているこの絵を見た時から、この絵の作者を聞くのを怖がっていたのだ。
 息子の夢を踏みにじった自分には、それを知る資格がないと思い込んでいたのだろう。
 しかし、ずっと聞きたかった。
 そして、ようやく聞けたのだ。