「…何を馬鹿なことを言ってるんだ!」

 マドルスは、壁に貼られている絵をよく見もしないで叫んだ。

「…見てよ父さん…僕は絵が好きなんだ!」

「お前は、わしを越えるピアニストになるんだぞ!」

 二人の叫び声を聞き付けた執事達が、フェルドの部屋に駆け付けてきた。

「おい!この部屋に飾ってある絵を、全て燃やしてしまえ!」

 執事達は苦い顔をして、マドルスの言う通りに絵を壁から剥がし始めた。

「止めてよ!」

 フェルドは執事達の服を掴みながら懇願した。

「…すいません、フェルド様」

 執事達はフェルドの手を振りほどきながら、絵を剥がしていく。

「ねぇ!父さん止めてよ!」

「うるさい!お前は、わしの言う通りにしとけばいいんだ!」

 マドルスは顔を真っ赤にして憤慨している。

「…やめてよ…母さんの絵もあるんだよ」

 しかし、その言葉はマドルスには響かなかった。

「…全部、剥がし終わりました」