「…はい」

 リアンは、初めて見るマドルスの厳しい顔付きを見て、姿勢を正して返事をした。

「…明日からも、毎日じいちゃんが送り迎いしてやるからな」

 マドルスは表情を緩め、笑顔になった。
 夕食が終わると、リアンは部屋に戻りピアノを弾いた。

「…やっぱり楽譜なんてないほうが楽しいや」

 指先が動くままにピアノを弾いているリアンは、そう思った。
 二時間程ピアノを弾いていたリアンは、やけに広い風呂に浸かり、部屋に戻ると、髪も乾かさぬままベッドに潜り込んだ。そして、布団から頭だけをひょっこりと飛び出させると、枕元の棚に飾ってある両親とジャンの写真におやすみを告げ、眠りに就いた。そして朝が来た。
 朝食を済ませたリアンは、マドルスと共に車で学校へと向かう。

「行ってくるね!」

 学校に着いたリアンは、執事が開けてくれたドアから元気良く飛び出し駆けて行く。そして、クラスメイトに挨拶を交わしながら、教室に着くと、直ぐに自分の席に座った。
 そんなリアンの元に、待ち焦がれていたシャロンが近付いてきた。

「ねぇ、今度遊んであげてもよろしくってよ」

 高飛車に言ったシャロンの顔は、真っ赤だ。