「リアン、学校は楽しかったか?」

 発進した車の中、リアンの横に座っているマドルスは、目の中に入れても痛くないと云わんばかりの笑顔を浮かべている。

「うん!友達がいっぱいできた!」

「そうか!そうか!」

 マドルスはリアンの頭を可愛さ余って、わしゃわしゃと撫で回した。

「家帰ったら、じいちゃんと遊ぶか?…何して遊ぼうか?」

「…僕、ピアノ習いたい」

「ピアノ?いいぞ、教えてやるぞ」

「ありがとう…僕、楽譜が読めないんだ…それに学校の勉強も全然分からないし」

 そう言うと、リアンはしょぼんとした顔をした。

「…そうか…じゃあ家庭教師も雇わないとな」

「…家庭教師?」

「リアンはじいちゃんの孫だからな…いっぱい勉強して、将来立派な大人にならないと駄目なんだぞ」

「…うん」

 リアンは何故か気が重くなり、憂鬱そうに答えた。
 家に着いたリアンは、マドルスと二人きりで、とある部屋に来ていた。
 この部屋には自分の部屋にあるピアノよりも、値がはりそうな高貴な雰囲気を漂わせているピアノが置いてある。