決して広いとは言えないが、二人で住むには十分な広さだ。

「フゥー…」

 椅子に腰掛けたリアンは、疲れた様子で溜め息を付く。
 そしてテーブルの上の鍋から、ジャン特製のシチューを皿によそうと、一人きりの食事を始めた。
 やけに具が大きいシチューは、作ってから時間が経っているせいか、すっかり冷たくなってしまっている。
 いつもジャンからは、鍋を温め直してから食べろと言われていたが、1人きりの食事のせいか、リアンはいつも温め直さずに食べていた。そのせいか、なかなか食が進まない。
 パンを一口と、冷たいシチューを半分程平らげたところで、食事を止めた。
 食器を洗い終えたリアンは、風呂場へと向かう。

「フゥー…」

 程良く熱いシャワーを頭から浴びて、また溜め息を付いた。
 そして、微かに花の香りのする石鹸を泡立て全身に塗りたくると、汗をかいて汚れた体を丁寧に洗い、風呂を出た。

「…ワハッハハ…ハハ」

 下の階からは、賑やかな声が聞こえてくる。
 リアンはそれをよそに、まだ濡れている髪をタオルでゴシゴシと拭きながら、ベットにゴロンと横たわった。
 そして、よっぽど疲れていたせいか、そのまま夢の世界へと行ってしまったようだ。

「…トントン…コトコト」

 台所から聞こえてくる音で、リアンは目を覚ました。
 どうやらジャンが朝食の準備をしている様子だ。