マドルスの演奏が終わると、リアンは力強く拍手をした。

「凄いよ!」

 その声からも、リアンが興奮しているのが分かる。

「お前のピアノも凄いんだぞ」

「本当!?」

「あぁ…じいちゃんの血を受け継いでいるんだからな」

 マドルスはそう言うと、豪快に笑った。そして、二人は楽しそうに笑い合った。

「リアン、腹減らないか?そろそろ飯にしよう」

 部屋を出た二人は、長い廊下を歩き出した。そして、家の中とは思えない程の時間を歩き、先を歩くマドルスは、とある部屋の中へと入って行った。後を追っていたリアンも、部屋の様子を伺うようにして、中へと続く。
 部屋の中央には縦長の大きな黒いテーブルが置かれている。その上には白いクロスが敷かれ、コップや食器などが置かれていた。そして、テーブルの両端には、黒い服を着た男が二人立っている。
 黒い服を着た一人が椅子を引くと、そこにマドルスは腰を下ろした。

「そこに座りなさい」

 リアンの足は、マドルスの指示した席へと向かった。それに合わせるように、もう一人の黒い服を着ている男が、椅子を引いた。

「ありがとう」

 リアンは、黒い服の男にお礼を言った後、椅子に腰掛けた。

「お礼はいいんだよ、それが仕事なんだから」

 マドルスは縦長のテーブルの先で、少し厳しめの表情を浮かべている。

「あっ、はい」