汽車を一日半乗り継ぐと、マドルスの家がある、街の駅へと着いた。
マドルスは途中立ち寄った駅で電話を掛け、リアンの転校の手続きをしてくれている。汽車の中では口数は少なかったものの、二人は色んな話しをした。
会話の殆どは、マドルスからの問い掛けであった。それを悲しむ心に蓋をしたリアンが答えていた。しかし、リアンはまだ少年。悲しみを抑えきれない時があっても、仕方が無いだろう。その時マドルスは、言葉を掛ける事はしなかった。
汽車を降りた二人は、改札を抜けて、駅を出た。駅前には、黒い光沢のある高級車が停まっている。その車の前には、皺一つない黒のスーツと、黒のハット、それに白い手袋を嵌めている男が立っている。格好からして、この男はこの車の運転手のようだ。
運転手は駅から出て来たマドルスに気付くと、頭を深く下げた。マドルスは静かに頷くと、車に近付いて行く。運転手はタイミングを見計らって、後部座席のドアを開けると、また頭を深く下げた。
「リアン、荷物を運転手に預けなさい」
「えっ?」
「荷物をトランクに入れるから、その荷物を預けて」
「…うん。お願いします」
リアンは、フェルドの絵を包んだ布を抱えたまま、鞄だけを運転手に渡した。
「それも渡しなさい」
「えっ?…う、うん」
フェルドの絵は自分で持っていたかったが、マドルスの言う通り、リアンは運転手に渡した。
「さぁ、乗って」
マドルスは開かれたドアの奥へとリアンを導くと、自分もその横に座った。
ドアは開いたままだ。しかし、直ぐに運転手がそのドアを閉めた。
全ての荷物をトランクに仕舞った運転手が、自分の職場である、運転席に乗り込んできた。
マドルスは途中立ち寄った駅で電話を掛け、リアンの転校の手続きをしてくれている。汽車の中では口数は少なかったものの、二人は色んな話しをした。
会話の殆どは、マドルスからの問い掛けであった。それを悲しむ心に蓋をしたリアンが答えていた。しかし、リアンはまだ少年。悲しみを抑えきれない時があっても、仕方が無いだろう。その時マドルスは、言葉を掛ける事はしなかった。
汽車を降りた二人は、改札を抜けて、駅を出た。駅前には、黒い光沢のある高級車が停まっている。その車の前には、皺一つない黒のスーツと、黒のハット、それに白い手袋を嵌めている男が立っている。格好からして、この男はこの車の運転手のようだ。
運転手は駅から出て来たマドルスに気付くと、頭を深く下げた。マドルスは静かに頷くと、車に近付いて行く。運転手はタイミングを見計らって、後部座席のドアを開けると、また頭を深く下げた。
「リアン、荷物を運転手に預けなさい」
「えっ?」
「荷物をトランクに入れるから、その荷物を預けて」
「…うん。お願いします」
リアンは、フェルドの絵を包んだ布を抱えたまま、鞄だけを運転手に渡した。
「それも渡しなさい」
「えっ?…う、うん」
フェルドの絵は自分で持っていたかったが、マドルスの言う通り、リアンは運転手に渡した。
「さぁ、乗って」
マドルスは開かれたドアの奥へとリアンを導くと、自分もその横に座った。
ドアは開いたままだ。しかし、直ぐに運転手がそのドアを閉めた。
全ての荷物をトランクに仕舞った運転手が、自分の職場である、運転席に乗り込んできた。