さよならじゃない。また直ぐにこの部屋に戻る日が来る。
リアンは最初に目がいった、一枚の絵だけを額縁に入れたまま、布で包んだ。
自分の荷物は持てるだけ纏めた。
リアンはジャンの部屋に行き、着替えを別の鞄に詰めると、今まで育ててくれた感謝の手紙を書き、テーブルの上にそれを置いた。そして、名残惜しむ背中だけを残し、一階へと降りて行った。
「…リアン、そんなに荷物持ってどこに行くんだ?」
昔の常連客が尋ねた。
「…うん、ちょっとね…おじさん、お願いがあるんだけど…後でこの荷物をジャンに届けて欲しいんだ」
本当は自分で渡したい。手紙なんかではなく、直接感謝の気持ちを伝えたい。しかし、それをすれば、決意が揺らぐだろう。リアンは頼むしかなかったのだ。
「ん?…もう俺達も帰ろうとしてたからいいけど」
リアンの様子に気付いた昔の常連客は、不思議そうな顔をして荷物を受け取った。
「…おまたせ」
リアンは外で待っていたマドルスに向かい、作り笑顔を見せた。
「うん…じゃあ、挨拶しに病室に戻るか」
マドルスは少し不安そうな顔をした。
「…ううん、行かなくていい」
その顔を見せないように、リアンは俯いた。
リアンは最初に目がいった、一枚の絵だけを額縁に入れたまま、布で包んだ。
自分の荷物は持てるだけ纏めた。
リアンはジャンの部屋に行き、着替えを別の鞄に詰めると、今まで育ててくれた感謝の手紙を書き、テーブルの上にそれを置いた。そして、名残惜しむ背中だけを残し、一階へと降りて行った。
「…リアン、そんなに荷物持ってどこに行くんだ?」
昔の常連客が尋ねた。
「…うん、ちょっとね…おじさん、お願いがあるんだけど…後でこの荷物をジャンに届けて欲しいんだ」
本当は自分で渡したい。手紙なんかではなく、直接感謝の気持ちを伝えたい。しかし、それをすれば、決意が揺らぐだろう。リアンは頼むしかなかったのだ。
「ん?…もう俺達も帰ろうとしてたからいいけど」
リアンの様子に気付いた昔の常連客は、不思議そうな顔をして荷物を受け取った。
「…おまたせ」
リアンは外で待っていたマドルスに向かい、作り笑顔を見せた。
「うん…じゃあ、挨拶しに病室に戻るか」
マドルスは少し不安そうな顔をした。
「…ううん、行かなくていい」
その顔を見せないように、リアンは俯いた。