その後二人が、お尻叩きの刑を喰らったのは言うまでもないだろう。
 帰り道、お尻を擦りながら、二人は笑い合った。
 あんなに痛いお尻叩きの刑ではあったが、それもいつしか二人の思い出になるだろう。
 二人の出会いの場であり、別れの終着点でもある、永遠に続く坂道を下り切った。
 あんなに笑い合っていた二人だが、みるみるその笑顔は消えて行く。そして長い沈黙を経て、お互いがまた会えると信じ、握手を交わした。
 その後、リアンはドニーの背中が見えなくなるまで、涙を流し見送った。
 ドニーは泣き顔を見られたくないからか、振り返ることはしなかった。

「ただいま」

 酒場に戻ったリアンは、カウンターの中に居るジャンに声を掛けた。

「リアン学校から電話あったぞ…訳は聞かないが、もうだめだぞあんなことしちゃ」

 カウンターから出てきたジャンは、リアンの頭を軽く小突いた。

「…うん」

 リアンの目に涙が溢れ出した。

「痛かったか!?」

 ジャンは慌てた様子でリアンを抱き締めた。

「…ドニーが今日で、この街から居なくなっちゃうんだって」

「…そうか」

 ゴツゴツしながらも、温かみのある優しい手が、リアンの頭を撫でる。