「行ってきます!」

 朝食を済ませたリアンは、学校へと向かう。そして商店街を抜け、いつものように坂道の前で足を止めた。
 しばらくそこで待っていると、ドニーが向こうから歩いて来るのが見えた。しかしドニーは、いつものような元気がない。

「ドニーどうしたの?…病気でもしたの?」

 リアンは心配そうな顔をしている。

「ううん…リアン、俺ずっとリアンに言いたかった事があるんだ」

 ドニーは、いつもは駈け上がる坂道を歩きながら話し始めた。

「…何?」

 リアンはドニーの真剣な顔付きが心配でしょうがなかった。

「…俺ん家、この街を出るんだ」

「えっ!?」

「…今日でリアンとは、さよならなんだ」

 ドニーは鼻水と涙を、長袖の裾で拭った。

「…嘘だよね!?」

 ドニーにはいつも嘘を付かれている。
 リアンは、信じたくなかった。