その日ジョルジョバは、医者を訪ねる為に、自宅から遠く離れた外国の地に来ていた。そして無理がたたったジョルジョバは、とうとう倒れてしまったのだ。
 倒れた場所が、不運だったとしか言いようがない。
 ジョルジョバは、意識を失うようにして歩道から車道に倒れ込んだ。そして運が悪い事に、そこをトラックが走り抜けた。
 即死だった。
 ジョルジョバが事故に遭ったのは、一睡もしていなかったのが原因だと、入院中の病院で警察から聞かされた時、リアンは自分を多いに責めた。
 ジュリエが死んだのも。
 スタルスが壊れたのも。
 ジョルジョバが死んだのも。
 全ては、自分がピアノと出会ったせい。
 自分がピアノを弾いていたせいで、三人は死んでしまった。いや、ピアノを弾いたせいばかりではない。ジャンも、マドルスも、両親も、自分に関わったから死んでしまったのだ。
 リアンはそう思い込み、自分を責めた。
 退院してからのリアンは、変わってしまった。
 ジョルジョバとの思い出が詰まる家を出たリアンは、人目を避けるように、山の中にあるこの小屋で一人で暮らしを始めた。
 あれから仲間とは、一度も会っていない。
 あれからピアノには、一度も触れていない。
 窓際に置いた、古ぼけたテーブルに椅子。
 リアンはよろけるようにして、椅子に座った。
 力が上手く入らない。日に日に弱まっていく自分を感じていたリアンは、そこである事を感じた。
 もうすぐ死ぬ。
 死期を悟ったリアンは、もう一度自分の両腕を見詰めた。