「リアァン!」

 悲鳴を上げ逃げ惑う者達を背に、ジュリエはリアンの元へと走り出した。
 銃声がした。
 二発目の銃弾も、リアンの腕を捉えた。

「パパ!止めてぇぇ!」

 スタルスの銃口は、両腕を撃たれ跪いたリアンに向けられている。

「パパお願い!止めてぇぇぇ!」

 リアンまではあと僅か。
 ジュリエは、叫びながらも走りを止めない。

「お前がいなければ、ジュリエが世界一なんだぁぁぁ!」

 スタルスは叫びながら、引き金を引いた。

「リアァァァァン!」

 何が起こったのか、リアンには分からなかった。
 ただ分かる事は、ジュリエに抱き締められている事だけ。しかし、直ぐにその違和感に気付いた。

「…ジュリエ?」

「…リアン、大丈夫?」

 耳元で囁くジュリエの声が、やけに弱々しく感じる。

「…ジュリエ?大丈夫?」

 自分から引き離し、ジュリエが今どんな顔をしているのか確かめたい。
 リアンはまともに動かない両腕で、抱き付くジュリエを自分から引き離した。
 目の合ったジュリエは、苦しそうに笑っている。

「…ジュリエ、どうしたの?」

 わなわなと震える唇で、リアンは問い掛ける。

「…ごめんね…パパがごめんね」

 ジュリエはその言葉を口にすると、崩れるように床に倒れ込んだ。

「ジュリエ?…ジュリエ!」

 リアンは床に倒れたジュリエに向かい、傷付いた両腕を伸ばした。

「バアァァァン!」

 最後の銃声が、悲鳴が上がる会場内に響き渡った。