「生涯聴いた中で、一番素晴らしい演奏だった」

 その賛辞の言葉が嘘でない事は、言った者の目を見れば分かる事。
 その真実を真摯に受け取ったリアンは、深く頭を下げた。そして頭を上げたリアンは、いつまでも止まない拍手が鳴り響く客席に体を向けた。

「ありがとうございます」

 リアンが口から溢す心の底から出た言葉は、割れんばかりの拍手の音でかき消されていても、客席に座る者一人一人に、ちゃんと伝わっているだろう。
 リアンは自分が勝ち取った証である、賞状と盾を抱き締めながら、観客に座る者達に対し頭を深く下げた。
 鳴り止まなかった拍手の音が、ぴたりと止まった。
 一瞬の静寂。
 それがざわつきへと変わった。
 リアンが頭を上げる。
 その視線の先に、一人の男が立っていた。

「…パパ」

 ステージの端に立つジュリエの口から、リアンの前に立つ男の呼び名が、悲しげに吐き出された。

「きゃあぁぁぁ!」

 スタルスの一つの動作で、客席から悲鳴が上がった。
 スタルスは右手に握り締めた拳銃の銃口を、目の前に立つリアンに向けている。

「いなければ…お前がいなければ」

 憎しみを含んだ声で、スタルスはブツブツと呟いている。

「パパァ!」

 自分を愛し、自分も愛している者の叫び声は、正気を失っている今のスタルスには届きはしない。
 乾いた音が会場に響いた。
 銃口の先からは、薄らとした白い煙が上がっている。