「どれどれ味見するか」

 ジャンは、コトコトと煮える仕込み中のスープを皿一杯によそうと、ふぅふぅしながら一気に平らげた。

「うまい!さすが俺!」

 味見と言いながら、一人前のスープを平らげる辺りは、食いしん坊のジャンらしい。
 二人はいつものように、お喋りしながら楽しげに料理を作り続けた。
 そして夕方の六時には料理は完成した。
 並べ終えたテーブルの上には、所狭しと料理が置かれている。とても二人で食べるとは思えない程の量だ。ゆうに五人前はありそうだ。
 ジャンはビールをグラスに注ぎ、リアンはジュースを注いだ。そして二人は乾杯し、今宵の宴が始まった。

「リアン、馴れ初めっていうのはな、今日一日考えてたんだが、出会いみたいな事をいうんだ」

「出会い?」

「うん出会い…今朝お前の両親の馴れ初めの話、しようとしてただろう」

「…うん」

「お前の両親は運命的に出会ったんだ」

「運命ってなに?」

「……」

ジャンは運命の意味を考え始め、また固まった。

「…パパとママの馴れ初め教えてよ」

 固まるジャンを見て苦笑いを浮かべたリアンは、話しを変えた。

「…ん?あぁ…リアンはフェルドがこの町に来た理由は知ってるよな」

「うん知ってるよ。画家を目指して旅してたんだよね」

「うん、そうだ…それで花屋で働くソフィアを見掛けて、この街に留まったんだ」

「…ママを見掛けて?」

「そうだ…ソフィアはこの街でも有名な美人だったからな…実は俺も…うぅん!」

 ジャンは言いかけて、慌てて咳払いをした。
 危うく、ソフィアに惚れていた事を、言いそうになってしまったのである。