それは、お互いが演奏に向け心を落ち着かせているせいなのかもしれない。
ジュリエはこれまで幾度も他のコンテストで演奏し、輝かしい成績を残している。しかし、このコンクールには初参加。幾度も大勢の前でピアノを演奏してきたジュリエ。そんな彼女でさえ、これ程の広さがある会場で演奏した事はなかった。
そしてジュリエは知っている。毎年このコンクールの客席は全て埋め尽くされ、立ち見客まで出る事を。それ故だろう、コンクールに慣れているジュリエでも、緊張している様子だ。
二人の耳に聴こえていた、小さなピアノの音が止まった。
どうやら一人目の演奏が終わったようだ。
「ジュリエ.ソーヤーさん、前室に移動してください」
控え室に居る係員の男が、手元の名簿を見ながら、ジュリエに呼び掛けた。
「はい」
静かに立ち上がったジュリエは、横に座るリアンへと視線を送る。
「頑張って」
小さな声で声援を送りながら、リアンは胸の前で作った拳を小さく振った。
「ありがとう」
緊張した面持ちの中に笑顔を作ったジュリエは、軽く握った拳を振り返すと、控え室から出て行った。
今、控え室の中には係員の男と、十九人の少年少女が居る。
今日の演奏者は、二十二人。
三人が控え室に居ない。
ジュリエはこれまで幾度も他のコンテストで演奏し、輝かしい成績を残している。しかし、このコンクールには初参加。幾度も大勢の前でピアノを演奏してきたジュリエ。そんな彼女でさえ、これ程の広さがある会場で演奏した事はなかった。
そしてジュリエは知っている。毎年このコンクールの客席は全て埋め尽くされ、立ち見客まで出る事を。それ故だろう、コンクールに慣れているジュリエでも、緊張している様子だ。
二人の耳に聴こえていた、小さなピアノの音が止まった。
どうやら一人目の演奏が終わったようだ。
「ジュリエ.ソーヤーさん、前室に移動してください」
控え室に居る係員の男が、手元の名簿を見ながら、ジュリエに呼び掛けた。
「はい」
静かに立ち上がったジュリエは、横に座るリアンへと視線を送る。
「頑張って」
小さな声で声援を送りながら、リアンは胸の前で作った拳を小さく振った。
「ありがとう」
緊張した面持ちの中に笑顔を作ったジュリエは、軽く握った拳を振り返すと、控え室から出て行った。
今、控え室の中には係員の男と、十九人の少年少女が居る。
今日の演奏者は、二十二人。
三人が控え室に居ない。