従妹という、血の繋がり以上の感情で想い合う二人の目には、再会の涙の粒が浮かんでいる。

「…静かにしてくれませんか?」

 近くの席に座る眼鏡を掛けたおさげの少女が、顔を赤らめながら二人を注意した。
 この少女の赤面は、憤慨しているからではないようだ。男女が抱き締め合う姿を見るには、まだ早過ぎるのだろう。

「すいません」

 二人は少女に謝った。

「リアン、行こう」

 ジュリエはリアンの手を取ると、ドアへと駆け出した。そして手を繋いだまま部屋を出た二人は、廊下の先にある階段へと辿り着いた。

「ここなら話してても、迷惑にならないね」

 手を握り締めたまま、ジュリエは潤んだ瞳をリアンに向ける。

「…うん」

 二度と会う事はないと思っていた初恋の人が、目の前に居る。
 リアンの胸は張り裂けそうだった。

「リアンは、今何処に住んでるの?」

 ずっと気掛かりだった事を、ジュリエは尋ねた。

「この街に住んでるよ」

 リアンは躊躇う事なく、ありのままを答えた。

「…一人で住んでるの?」

 そう聞いたジュリエは、どこか苦しそうだ。
 まだ働くには若すぎるリアンが、どのような生活を送っているのか心配で堪らないのだろう。