既に誰かと競わせるレベルではない事は、ジョルジョバは分かっている。だからこそ、そんな言葉が出たのかもしれない。
 コンクールを目指し、リアンは今までピアノを弾いてきた訳ではない。
 心がピアノを求めている。指先が鍵盤に触れたがっている。リアンはそんな理由でピアノを毎日弾いてきた。しかしそんな理由でも、目指していたものがある。それがプロのピアニストだ。
 リアンはコンクールよりも先にある、プロのピアニストになる事を見据え、元気良く返事をした。

「うん!」

 そして月日は流れ、リアンが演奏するコンクール当日となった。

「リアン!皆にお前のピアノを聴かせてくるんだぞ!」

 玄関から身を乗り出し、ジョルノは大袈裟に手を振り、車に乗り込むリアンに声援を送る。

「うん!行ってくるね!」

 元気良く返事をしたリアンは、高鳴る胸を抱えながら、車の助手席に乗り込んだ。
 勿論、その車の運転席にはスワリが座っている。

「スワリ、よろしくね!」

「あぁ、教授は一緒に行かないのか?」

 一緒に行かないとは聞いているが、スワリは確認の為に、聞いているようだ。

「うん!後から来るんだって!」

 元気良く答えたリアンは、少し興奮している様子だ。

「そうか、じゃあ行くか」

 ハンドルを握り、アクセルが踏まれた車は、ゆっくりと玄関の前から離れて行く。そして公道へと出た車は、真っ直ぐに続く道を走り続ける。それから約二十分後、二人を乗せた車は目的地に着いた。
 スワリにとっては、通い慣れた会場。リアンにとっても、お馴染みの会場だ。