うっとり顔のドニーは、急に踊りだした。
 リアンが曲調を、悲しい雰囲気から陽気なものに変えたのだ。

「イェーイ!ウバウバ!」

 ドニーは変てこな掛け声で踊りまくった。
 そんな仕草を見て、吹き出しそうになるのを堪えながら、リアンはダンスに合わせてピアノを弾き続けた。しかし、そんな楽しい時間もそろそろ終わりの時間が迫ってきたようだ。
 秘密基地で過ごす時間は、一時間までと二人は決めていた。
 リアンもドニーも店の手伝いがある為、この秘密基地には一時間しか居ないと決めているのだ。
 今日は酒場は休みだったが、二人はいつもの時間になり、秘密基地を後にした。
 帰り際、ドニーは滅多にしない真剣な顔付きになり、リアンに何か言おうとし、口篭もった。

「どうしたの?」

「…リアン…やっぱりいいや」

 ドニーは作ったような笑顔を浮かべ、顔の前で大袈裟に手を振った。

「…何?」

 滅多に見せないドニーの真剣な顔を見たリアンは、何を言おうとしたのか気になって仕方がなかった。しかし、ドニーは苦しそうな笑顔を浮かべるだけで何も言わない。

「…さあ、帰ろう!競走だ!」

 ドニーはリアンに背を向けると、一人駆け出した。