「美味しかったね。ジョルノ、作業は進んでる?」

 リアンの言う作業とは、家の修繕の事である。
 約二年。ジョルノ一人で作業しているが、まだまだ終わりそうにないのだ。
 皆は知らない事だが、ジョルジョバは家を買う時に、至る所に修繕が必要なこの家を選んだ。それは偏に、元大工のジョルノに、仕事を用意する為である。

「お坊ちゃん、お時間です」

 二人が楽しげに話していると、声が聞こえた。ジョルノはどう見ても、お坊ちゃんと呼ばれる程、若作りをしていない。このお坊ちゃんはリアンに向けられているのだ。
 そして、この家でリアンの事をお坊ちゃんと呼ぶのは、一人しかいない。
 くるりと声がした方へと顔を向けたリアンの先には、やはりショルスキが立っていた。

「うん、行ってくるね」

 リアンはいたずらをして叱られた子供のように、ぺろっと舌を出すと、二人に手を挙げ、玄関へと急いだ。
 いつもそうだが、ジョルノと話す時は時間を忘れてしまう。機関銃のような、ジョルノの矢継ぎ早に繰り出すお喋りも原因なのだが、年齢こそ大きくかけ離れいるものの、リアンはジョルノを親友だと思っているのだ。
 親友とのお喋りは、時間を忘れがちになるもの。リアンにも、それが当てはまるのだろう。
 そして、親友だと思っているのはリアンだけではない。ジョルノもそう思っている。
 この二年という月日の中で、二人はより親密になったのだ。
 玄関のドアを開けると、目の前に一台の黒い車が停まっていた。光沢があり、傷一つ付いていないところから見て、大事に乗られている事が分かる。
 助手席のドアを開けたリアンは、挨拶をしながら、車に乗り込んだ。

「おはよう」

「おはよう、今日はゆっくりなんだな」