切なげなその態度に気付きながらも、リアンの将来を真剣に考える教授は、それを確かめずにはいられなかった。

「…ジャンはもう、この世にはいません」

 唇を微かに震わせ、リアンはぽつりと答えた。

「…そうか…すまんな…最後に聞かせてくれ。リアンには他に身内はいないんじゃな?」

「…はい」

 質問を終えた教授は、静かに目を閉じた。そして次に目を開けた時には、優しげな瞳でリアンを見詰めていた。

「リアンが良ければ、わしの息子にならないか?」

「え?…いえ」

 予期せぬ言葉に、リアンの口からそんな言葉が漏れた。

「わしはリアンの年も知らない、こんな老いぼれじゃが、この数日間でリアンの事は分かったつもりじゃ。リアンも少しはわしの事を分かってきた頃じゃろ?」

 教授は問い掛ける形で言葉を止めた。しかし、戸惑っているリアンの口からは、返事が聞こえてはこない。

「…リアン、わしは悪い人間か?」

 戸惑っているリアンを見詰める教授は、質問を変えた。

「…教授が、悪い人間な訳ないじゃないですか」

 リアンは顔を上げ、自分を見詰めるその瞳を見詰め返す。

「…なら、前向きに考えて欲しい。直ぐに答えをくれとは言わん。よく考えて答えを出してくれ」

 教授はそう言うと、全てを包み込むような優しい笑顔を浮かべた。

「…はい」

 その笑顔に包み込まれたまま、リアンは静かに頷いた。

「…最後に言わせてくれ。わしは本心でリアンを息子にしたいんじゃ。それだけは分かってくれ」

 自分を真っ直ぐに見詰める教授のその瞳で、それが嘘ではないとリアンには分かった。
 それから一週間。
 リアンと教授は親子になった。
 戸籍上では本当の親子ではないが、血の繋がる親子にも負けない関係になっていくと、仲間の皆はそう思っている。