「叔父さんは、父さんの弾くピアノを恨んでいました」

「…ピアノ?リアンの父親はピアニストなのか?」

 リアンがあれだけのピアノを弾くのだ。
 父親も名のあるピアニストだと教授が思うのも、不思議ではないだろう。

「いえ、画家でした…でも父さんはピアノが凄く上手くて、僕は父さんの弾くピアノが大好きでした」

「リアンがそう言うんじゃ、相当上手かったんじゃろう…しかし、何故叔父さんは、ピアノが上手いだけで親父さんを恨む必要があるんじゃ?」

「…詳しくは知りませんが、叔父さんは才能がありながらピアニストの道を捨てた父さんを許せなかったそうです」

 様々な事を思い出しながら喋るリアンは、とても悲しそうだ。

「…そうか…辛い事を思い出させて、すまなかったな…リアンの生まれ故郷は何処なんじゃ?」

 教授はそう聞きながら、優しくリアンの頭を撫でた。

「…隣町です」

 優しく頭を撫でる教授とは目を合わせる事なく、リアンは溜め息を吐くように、切なげに答えた。 

「…リアンを育ててくれたジャンさんは、隣町にはもういないのか?」