リアンは不安になった。
 その不安が表情に現れそうになった時に、教授が口を開いた。

「…リアン」

 それを待っていたかのように、呼ばれたリアンだけではなく、皆が一斉に教授に視線を注いだ。

「…はい」

 教授の顔は真剣だ。
 リアンは、ますます不安になった。

「ここに居る皆は、訳があって今のような生活をしている。わしのように、望んでしている者もいれば、望まずにしている者もいるはずじゃ。しかし、わしは皆が何故ここに居るのかは、全員は知らないんじゃ。心に傷を持っているなら、聞く訳にはいかんからな」

 教授はそこで言葉を止めると、包み込むような優しい笑顔を浮かべた。そして、リアンを真っ直ぐに見詰め、言葉を繋いだ。

「しかし、リアンはまだ一人で生きていくには若すぎる。勿論リアンには、わしらという仲間が居るが、リアンには人生を教え、育ててくれる親が必要なんじゃ…分かるな?」

 優しげな教授の視線から目を反らしたリアンは、俯きながら消え入りそうな声で答えた。

「…はい」

「リアン、責めている訳ではないんじゃ。わしらは大切な仲間の将来を心配しとるんじゃ」

「そうだよリアン」

「俺達はリアンの事が心配なんだ」