手を伸ばせば届きそうな程の、鮮明に煌めく星の数々。
 霞のような白い湯気越しに見る幻想的な星空は、リアンにとって初めての経験だ。

「どうだ、綺麗だろ?」

 ジョルノの声が聞こえた。しかし、それは先程までの騒がしいものではなく、穏やかな声だった。

「はい、凄く綺麗です」

 声を発した者の姿は、布の向こう側。
 視線はそちらへは移さずに、リアンは星空を見上げる。
 その後も続く、穏やかな声のジョルノとの会話を楽しみながら、リアンはドラム缶風呂を満喫した。

「どうじゃった、ドラム缶風呂は?」

 小屋に帰ってきたリアン達を笑顔で出迎えた教授は、体からほのかに湯気を立てているリアンに尋ねた。

「凄く気持ちよかったです」

 そう答えたリアンは、ゆで卵のようにつるんとした肌に生まれ変わっている。

「そうか、よかったよかった」

 教授は自分の事のように、笑顔で喜んでいる。

「次は、誰が入るんですか?」

 リアンのその質問に、皆は顔を見合わせた。しかし、誰も答えようとはしなかった。元気が取り柄のジョルノさえ、口を閉ざして教授の顔を見ている。