パンツを手に、布に綺麗に掛けられた服を見て、ジョルノは嬉しそうに尋ねた。

「ありがとうございます。後、パンツを脱ぐだけです」

「よし!パンツを脱いだら、布に掛けて、風呂に入るんだ!気持ちいいぞ!」

「…はい」

 見上げれば夜空が広がっている。ここは屋外。
 思春期真っ只中のリアンにとって、外で裸になる事は抵抗があるようだ。しかし、リアンが今居るのは路地裏の袋小路。
 リアンが小屋で住み始めてから一度たりとも、この袋小路で仲間以外の者を見た事がない。そしてリアンは、壁と布に挟まれている。
 例え裸になったとしても、誰からも見られる事はないだろう。
 何よりも、ジョルノが作り、沸かしてくれたドラム缶風呂には、裸にならなければ入れないのだ。
 そう考えている内に、恥ずかしがっている自分がちっぽけに感じたリアンは、清々しい気持ちでパンツを脱ぎ捨てた。
 赤茶けたレンガの土台の上に置かれたドラム缶には、温かそうなお湯が張られている。そして背丈の高いドラム缶に入りやすいようにか、前には踏み台が置かれている。
 産まれたままの姿となったリアンは、台に足を掛けるとドラム缶の縁に手を掛けた。そして、湯気立つ湯の中へとゆっくりと体を沈めていく。

「…はぁぁぁ」

 久し振りの風呂の中での溜め息。
 体が芯まで温まっていく。

「どうだ!気持ちいいか!?」

 布の向こうから、ジョルノの陽気な声が聞こえた。

「はい!凄く気持ちいいです!」

 そう言ったリアンの顔には、久しぶりに浮かべる、幸せそうな笑顔があった。