「…ん?どうしたリアン?悲しそうな顔をして」

「…なんでもないです」

 リアンは無理に笑顔を作り、答えた。

「教授!リアン!」

 リアンが作り笑顔を浮かべていると、ジョルノ達が揃って現れた。

「おぉ、今日はわし達が作った飯だぞ」

 教授は鍋の中の灰汁を取りながら、言った。

「えっ?料理嫌いの教授が作ったの?」

 ジョルノは腹の虫を鳴らせながら、驚いた顔をしている。
 無理も無い。教授とはかなり長い付き合いだが、一度も料理をしている姿を見た事がないのだ。しかし、皆は知らないが、教授は料理をする事を嫌っている訳ではない。
 教授は幼い頃から、ピアニストになる為に、両親から指を切る恐れのある包丁を使う行為を禁じられていたのだ。そして、ピアニストになってからも、料理をする事はなかった。
 その習慣は、表舞台から姿を消した今でも続いている。しかし、今日は早くリアンに温かな料理を食べさせたい思いに駆られ、本人さえ握った記憶の無い包丁を握ったである。
 そんな教授は、共に料理をしたリアンには、一度も包丁を握らせる事はなかった。
 それは、まだ開花してはいないが、ピアニストとして、将来のあるリアンを思っての行動だ。

「もう少しで、出来上がるから小屋の中で待っとれ」

 教授は恥ずかしそうに小鼻を掻くと、おたまで小屋を指した。

「はーい」

 ジョルノ達は、嬉しそうにお腹を擦りながら、小屋へと入って行く。