「リアンは、マドルス.ソーヤって知ってるか?」

 突然、祖父の名前が出て来て、リアンは驚いた。

「…知ってます」

 しかし、リアンは自分が孫である事を伝えなかった。

「マドルスは、世界でも今世紀最高のピアニストって言われてるけどな、それはジョルジョバがいなくなってからの事なんだぞ。それにジョルジョバは、今世紀最高ではなく、歴史史上最高の天才ピアニストと呼ばれているんだ。しかし、まだ人気絶頂だった頃、突然姿をくらました」

「…だから、ピアノが凄く上手なんですね」

 そう言ったリアンの頭には、教授のピアノの音が鳴っている。

「あぁ、わしも昔はちゃんと仕事してて家庭もあったんだぞ。ずっとホームレスって訳じゃないんだからな。わしの話はいいとして、わしがホームレスになってこの街に来た時、教授と出会って、我が目を疑ったよ。あのジョルジョバがホームレスの格好して目の前に居たんだからな。そしてわしらは仲間になった。教授は昔から、毎日わしらに飯を喰わせてくれた、大恩人だよ…わしはなんでジョルジョバがホームレスになったのか不思議で聞いたんだ。そしたら教授は、金と名声を手に入れて、もう飽きたと答えた。だからホームレスの真似事をしてるって言ったんだ。教授は昔から変わり者なんだよ」

「…そうだったんですか」