「そうじゃ、そのうちコンクールに出るんじゃぞ!」

「…教授からそんな風に言われたら、凄く嬉しいですけど…」

 リアンはそこで言葉を止めた。

「ん?どうしたんじゃ?」

 それに気付いた教授は、笑顔を浮かべたまま首を傾げた。

「…コンクールってどうやって出るんですか?」

 つても金もない自分がどうやってコンクールに出るのか教授に聞くのを躊躇っていたが、リアンは思い切って尋ねた。

「わしにまかせとけ!」

 教授は、自分の胸を握った拳でぽんっと叩いた。
 その頼もしい仕草が、リアンの不安を晴らしていく。

「よし、次の曲聴かせるからな」

「はい、お願いします」

 教授は再びリアンに聴かせる為に、ピアノを弾き始めた。
 夜になりジョルノ達が小屋にやってきた。
 また今日もビスコが料理を作り、賑やかな夕食となっている。
 談笑しながらの夕食。しかし、昨日もそうだが、誰もリアンが何故ホームレスになったのか聞こうとしてこない。こんな若さでホームレスになってしまったのに、不思議と思わないのか?
 皆、語りたくない過去があるのかもしれない。
 だから誰も聞いてこないのだろう。

「リアン、今日もピアノ聴かせてくれよ!」

 夕食の片付けも終わり、ジョルノはせがんだ。

「いいですよ」

 リアンは教授から教わった、今日初めて聴いた曲を弾き始めた。
 皆は目を閉じ、そのメロディーに酔い痴れるように、うっとりとした表情を浮かべている。そしてリアンのピアノ演奏は終わり、小屋の中は拍手が巻き起こった。