ライアはリアン達を横目でチラリと見ると、教壇へと向かった。
 二人は背筋を伸ばし、ライアが教壇に辿り着くのを静かに待った。

「起立!きおつけ!おはようございます!」

 軍隊ばりの大声で叫ぶドニーの号令の元、リアンは背筋を伸ばし、規則正しく頭を下げる。

「着席!」

 ドニーの合図で、二人は椅子に座った。

「…おはようございます」

 二人とは対照的に、ライアは静かな声で挨拶を返した。
 そして直ぐさま二人に背を向けると、古ぼけた黒板に文字を書き出した。
 ライアの背中を見たリアンとドニーは、互いに顔を見合わせ、静かに溜め息を吐いた。二人の様子からして、ライアが厳しい教師である事が分かるだろう。
 ライアは日によって感情が違う女性である。
 今日はおとなしい日。二人はそう思った。
 そんな彼女は、黒板に機械的に文字を書く作業を進めている。

「…リアン」

「しっ!」

 リアンはドニーの問い掛けを遮った。
 ライアに見付かりでもしたら、お尻叩きの刑に処せられる事が分かっているようだ。