「…全部は弾けないです。聴いたことのある曲は弾けますが、まだまだ聴いたことのない曲も沢山あるだろうし」

「聴いた曲は弾ける?楽譜を見ずに弾けるという事か?」

「はい、一度聴いた事のある曲は弾けます」

「…すごいなリアンは」

 教授はそう言うと、豪快に笑った。

「どうじゃリアン。わしは有名どころから知られざる曲まで、殆どの曲を弾けるから、教えてやろうか?」

「え?はい!全部の曲弾けるようになりたいです!」

 リアンは聴いた事のない曲を聴ける喜びに、目をキラキラとさせた。

「そうか、そうか!よし!じゃあわしがリアンにピアノを教えてやるからな!」

「ありがとうございます!」

 リアンはうれしくてしょうがなかった。
 あんなに感動するピアノを弾く教授から、ピアノを教えてもらえるなんて、思ってもみなかったのだ。

「よし!じゃあ飯食べたら、ピアノ弾くからな!」

 教授はそう言うと、親指を立てた。
 朝食が終わった。
 片付けを終えた二人は、ピアノの前へと移動した。

「リアンはショパンがどれ程の曲を書き残したか、知ってるか?」

「たしか、二百曲以上ありましたよね?」

「正解じゃ。じゃあまずは、わしの好きなショパンのバラード第一番から弾くからな」