今度は教授がピアノの前に座った。そして鍵盤に指を這わせ、リズムを奏でていく。
 そのピアノの音を聴いた瞬間、リアンの体に衝撃が走った。
 そして、その衝撃は一瞬で感動へと変わった。
 リアンは、他の者が奏でるピアノの音を聴いて、歓喜の涙を流した事は今までにもあった。しかし、今まで聴いた誰のピアノよりも、今聴いているピアノの音は、心の奥深く、そして魂さえも揺さぶられるような感覚に陥っているのだ。
 リアンは知らず知らずのうちに、涙で顔をくしゃくしゃにしている。その涙を拭うのを忘れる程、夢中になっているのだ。そして教授のピアノ演奏が終わる頃には、今までの嫌な事が、全て洗い流された気持ちになっていた。

「…どうじゃった?」

 ピアノを弾き終わり、涙を流しているリアンに向かい、教授は尋ねた。

「…感動しました」

 リアンはようやく涙を拭い、美しい音色を奏でた、教授のその指先を見詰めた。

「リアンのピアノも感動したぞ」

 教授はリアンが見詰めている指先を、リアンの肩に優しく置いた。

「そうだ!教授に負けてなかったぞ!」

 そう言ったジョルノは、親指を立てている。

「ありがとうございます」

 それが本心ではないと分かりながらも、リアンは素直に皆に感謝した。

「…さあ、宴会はまだまだ続くぞ!」

 教授はそう言い、コップを掲げる。
 こうして宴会は、夜まで続いた。