恐らくこの小屋は、廃材を使って建てられたのだろう。壁は板材が剥き出しのままで、色もバラバラだ。しかし、隙間らしきものは見当たらない。見上げた天井からも、日の光は見えていない。外見はボロ屋だが、中からはそれを感じさせない程、丁寧に作られている。
　家具は、一畳にも満たない大きさの茶色い木製のテーブルが一つ。それを囲むように、形や作りが違う椅子が五脚置かれている。そして壁側には茶箪笥のような物が置かれ、片隅にはピアノが置かれている。
　リアンはそのピアノに釘付けになった。

「ここで待ってれば、誰かその内くるからな」

　ジョルノはそう言うと、赤色の丸い椅子に腰掛けた。

「…このピアノ」

　リアンの目には涙が浮かんでいる。

「あぁ、リアンと出会った所から、皆で持って来たんだ」

「…弾いていいですか？」

　こんな離れた場所で、思い出のピアノにまた会えるとは思っていなかったリアンは、両目に涙を浮かべ、心臓の鼓動を早めている。

「弾けるのか？なら、弾いてみろ！」

　ジョルノはうれしそうに手を叩いた。
　リアンの足がピアノに近付いて行く。その足は僅かに震えている。そして、最愛のピアノに辿り着いたリアンは椅子に腰掛けると、開いた両手をゆっくりと鍵盤の上に置いた。
　懐かしい感触と、あの日まで触れていたピアノの体温が、この手の中にある。