リアンはジョアンの言葉を聞きながら、楽しかったジャンとの日々を思い出している。
 その楽しかった日々を共に過ごしたジャンに、二度と会う事が出来ないと気付くと、リアンの瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。
 余程、受け入れ難い事実なのだろう。
 リアンは咽び泣き、体を震わせた。
 長い時間、ジョアンに抱かれたまま泣いていたリアンは、ようやく顔を上げジョアンから離れた。

「…おじさん…ありがとう」

 涙を拭きながら、リアンはお礼を言った。

「…あぁ」

 ジョアンの瞳からも、涙が流れている。

「…お墓に行ってみるね」

 リアンはそう言い残し、重くなった足を無理矢理に動かした。

「リアン、一緒に行くか?」

 ジョアンは歩き出したリアンの腕を掴み、呼び止めた。

「大丈夫、一人で行けるよ」

 強がりではない。
 何故か分からないが、一人で墓に行きたいと思ったのだ。

「今日は何処に泊まるんだ?あのじいちゃんと来たのか?」

「…うん、駅で待ってるんだ。墓に寄ったら一緒に帰る…じゃあ、行くね」