「…リアンじゃないか?」

 リアンは声のする方へと視線を向けた。
 その視線の先には、数年ぶりに見る酒場の常連客のジョアンが立っていた。

「…いや…でかくなったな!」

 ジョアンはリアンに近付き、うっすらと涙を浮かべると、昔のようにリアンの頭を優しく撫でた。

「おじさん…おじさん元気だった?」

 リアンは懐かしい顔を見れて、心の暗がりが少しずつ晴れていった。

「俺はいつでも元気だぞ!」

 ジョアンは服の裾を捲り、力こぶを作って、にっこりと笑いながらリアンに見せ付けた。

「おじさん、元気そうだね」

「あぁ、元気だぞ…リアン、店を見に来たのか?」

「…ジャンに会いに来たんだ」

 リアンは潤んだ瞳でそう言うと、ジョアンから視線を外した。

「…お前知らないのか?」

 そう言ったジョアンは、とても悲しそうな表情を浮かべている。

「えっ?…何が?」