フェルドは初めてソフィアを見た時、身体中に電気が走ったと、親友であるジャンに語っていた。
 それほどに運命めいたものを、フェルドは、ソフィアに感じたのだそうだ。
 しかし、ソフィアと初めて会話らしい会話をしたのは、フェルドがこの街に来てから、三年の歳月が流れていた。
 フェルドはジャン同様に、女性が苦手だったのである。
 しかし、ジャンのアドバイス通りにバラの花束を贈ったフェルドは、それだけの理由ではないだろうが、無事にソフィアと結婚する事ができたのだ。

「リアンお前、フェルドから、ソフィアとの馴れ初めの話聞いた事あるか?」

「…なれそめ?…なれそめって、なに?」

「んっ?…馴れ初めっていうのは…んー…」

 ジャンは綺麗に尖った顎に手を這わせると、動かなくなってしまった。
 この男は何か考え事をすると、動かなくなってしまう特異体質なのだ。

「…ん?もう、こんな時間か…今日は店、久しぶりに休みだから、続きは夕食の時にでも話そうな」

 ジャンはようやく動き出した。

「うん。じゃあ、学校に行ってくるね」

 壁に掛けられている時計を一瞥すると、リアンは食べ残した料理達に別れを告げ、学校へと旅立った。