酒場のカーテンを開けると、茜色の光が窓辺に美しい影を作った。
 窓を開けたリアンは、沈んで行く夕日をしばらくの間眺めた後、いつものように店の掃除を始める。
 床を掃き、三十畳程の広さに窮屈に置かれた机を拭いている最中に、店主のジャンが店に入ってきた。
 ジャンは、埃で汚れた顔をタオルで拭きながらリアンに近付くと、バスケットボール程の大きさの丸々とした灰色の瓶を、拭いたばかりの机の上に置いて足を止めた。
 そして顔を拭いていたタオルでその瓶を丁寧に拭くと「どうだ綺麗だろう」と言って、はにかんだ。
 今まで灰色だった瓶はタオルで拭かれて、宝石のような綺麗な青色に変わった。いや、変わったのではなく、元からその色だったのだろう。
 薄暗くなり始めた部屋の中で、微かに光り輝く瓶を、リアンはたしかに綺麗だと思った。

「この瓶は俺が作ったんだ」

 ジャンは照れ臭そうに言うと、鼻の頭を掻いて、はにかんだ。そして、瓶について遠い目をしながら語り始めた。