「冬場は練習できる時間、短かったもんね」
背中から照る斜陽のせいで、俺たちの前に影が長く伸びている。実物の何倍くらいだろうか。何倍だとしても、俺の影の方が麻子のものよりぐんと長い。
並んだふたつの影はヒョコヒョコと不ぞろいに動き、互いに均等な距離を保つ。
「もう春……ちょっと経てば、五月か」
「んー?」
「いや、ほんともうすぐなんだよなって思って。最後の試合」
高三に上がった今、気付いたら意識してしまうのは、やはりバスケの試合のことだ。俺たち三年は、五月二十八日に高校生活最後の試合を控えている。
今までは、試合が終わるとすぐに次の試合に意識を向けていたけれど、これが終わればもう次はない。悔いを残そうが残すまいが、俺たちにとっては正真正銘、ラストゲームなのだ。
「うん……なんだかそう考えると、さみしいな」
飲み終わったパックをべこっとつぶしながら、麻子が言った。
麻子の短くなった髪が、夕暮れの川の水面から反射する光で輝いている。それが少し眩しくて、目を細めた。
「とくに元は、バスケなくなっちゃったら、ただのバカになっちゃうもんね」
「……は?」
若干感傷に浸っていたところを不意打ちされ、人相の悪いしかめっ面を作る。