俺たちが体育館を出る頃には、世界はすっかり色を変えていた。

 夕焼けの、赤。赤とひと口に言っても、原色の赤とは違って幻想的で、絵の具を何色混ぜても表現できないような色だ。

 ……と、もっともらしいことを言ってみるが、俺の美術の評価はいつも二か三。芸術的センスなんて、これっぽっちも持ち合わせていないのだけれど。


「なんか、一気に日が長くなった気がするよね」


 夕日の赤に染められながら、隣を歩く麻子が言った。

 麻子の口元には、俺が買い与えたパックジュースのストローが添えられている。

 いつからだろうか。負けた方がおごったジュースを、買った方が飲みながら一緒に帰る。それが、俺たちの日課になっていた。


「あー、だな。冬はすぐ暗くなってたのに」


 河原沿いの帰り道には街灯がないから、冬場はなかなかに暗くなる。ちょっと足を踏み外せばすってんころりん川の中だから、学校からは別の道で帰るようにと呼びかけられている。

 でも整備された道を選択すると遠回りになるしから、忠告を無視してこの道を使う生徒が多いのが現状だ。

 冬に比べれば、春である今はずいぶん明るくて、まるでまったく別の道を歩いているかのように思える。