正面に立った俺に、麻子は短い毛束を指先でつまみ、はにかんでみせる。練習の直後だからか、麻子の頬は上気して、ほんのり赤みがかっていた。


「ねぇ、元」
「ん?」
「……似合う?」


 冗談めかした、けれど少しだけ心配そうな麻子の声。長い髪もよかったけれど、ショートは麻子の明るいイメージをいっそう際立たせているように思う。

 まあ、つまり……超似合ってる。


「……サルみてぇ」


 けれど口から飛び出したのは、本音とはまったく違った言葉。麻子がむっと、くちびるを尖(とが)らせる。


「サルみてぇって……あんたそれ、女の子に言う言葉?」
「じゃあ、おサルさんみたいですね」


 ものすごい勢いで、麻子のバッシュケースが飛んできた。


「一緒じゃん」


 ――パスッ!

 今日も麻子のフリースローが、円を描くように綺麗に決まった。