「……おー、絶対ベスト四入りしてやる」
「ふふ、絶対ね。男バスも、女バスも!!」
麻子は俺の意気込みに同調し、またいつもの屈託ない笑顔を見せた。
じゃあね、と麻子のくちびるが告げる。また明日ね、と弾んだ声が耳に届く。
そうして麻子は、夕焼けの赤に吸い込まれるように走っていく。制服のスカートの端が、赤い光の中で小刻みに揺れていた。
ひらひらしているその生地が、まるで直接触れたかのように、心臓の辺りが、無性にくすぐったい。
『バスケなくなっちゃったら、ただのバカになっちゃうもんね』
どんどん遠くなっていく麻子の後ろ姿を見送りながら、俺は、先ほど言われたばかりの言葉を思い出す。
そして、小さくつぶやいた。
「……バスケバカ、か」
……うん、悪くはない。