「アランさん、申し訳ありませんが今後我がギルドは貴方との契約を打ち切る事になりました」
「······そうですか」
　来るべき時が来たか······、受付嬢から突き付けられた事実上の解雇宣告に俺はそう思った。
　俺アラン・バラックは今年で三十路になる中堅冒険者だ。
　１５歳にこのギルドに所属してから冒険者として活動してきた。
　しかし、思うように行かず気がつけばずっと最低ランクのＦランクのまま。
　同期や後輩に抜かされ馬鹿にされつつしがみついて来たがそれも遂に断ち切られる事になった。
「それではギルドカードの返却をお願いします」
　俺は持っていたギルドカードを受付嬢に渡した。
「では退所届にサインをお願いします」
　言われるがままにサインした。
　これで俺はこのギルドでの冒険者活動は出来なくなりフリーとなってしまった。
　今まではギルドに所属していたから受けていた宿屋の割引や武器の手入れ等サービスも受ける事が出来なくなり自腹でやる事になる。
　経済的にも大きな町で活動するのはかなりしんどい状況になる。
　ギルドを出た俺は少ない荷物を纏めて宿屋の主人にギルドをクビになった事を伝えて出ていく事を告げた。
　主人からは『お疲れさん』と肩を叩かれ慰められた。
（こうもあっさりと言われると······、結局それだけの関係だったんだな）
　まぁ、親しい友人もいないし頼ってくれる後輩もいないし······、なんだろ凄く自分が惨めに思えてきた。
　宿屋を出て俺は馬車に乗り込んだ。
「とりあえず田舎に帰るか······」
　唯一の居場所である故郷にまずは帰る事にした。
　冒険者になってからは一度も帰った事は無い。
　まずは１５年間の疲れを癒してからその後の事を考えよう······。