そうか、こずえも少なからず、僕と同じ気持ちだったのか——。

「そうだ、私新しいお茶菓子買ってきたんです。佐藤さんも一緒にどうですか?」

 上手く言えない言葉が、僕の心の中のわだかまりを少しずつほぐしていくようだ。左右相手に。左右ごときの言葉に。
 けれど間違いなく、僕はこのエセ神使の言葉に救われた気がした。

「私先に社務所に戻って用意しておきますので、ぜひ来てくださいね」

 みーこさんは僕の返事を聞こうともせず、笑顔で社務所に向かって駆けて行った。
 ……相変わらずみーこさんは察しがいい。もしかしたらさっき、こずえの依頼内容をうっかり吐露したのも、実はうっかりではなく、確信犯だったのかもれしれないな、と僕は考え直していた。
 だけど別にそんなことはもう、どうだっていい。今の僕は心がとても軽い。
 目に見えない心は、臓器という形すらないくせに、僕の心臓を圧迫し、体を蝕んでいた。それが一気に解放された。
 暑い中で、汗はどんどん顎先に向かって滴り落ちていく。汗をかくのはデトックスになって体に良いとよく言ったものだ。実際は汗からでは毒素など微々たる量しか出ないというのに。
 けれど僕の汗からは間違いなく毒素が出ているのだろう。だってこれはいつもと滴る場所が違い、いつもよりも塩っ辛い汗だったからだ。