「ちなみにテストはいつあるの?」

 僕がみーこさんを拝んでいる様子がバレそうになって、慌てて話に割って入った。するとみーこさんも再び凛花ちゃんと目線を合わせている。

「明後日の金曜日」
「明後日?!」

 それはなかなか、急だ。依頼があったのは今朝のことだ。テストの点数を上げるのも今からで間に合うのか……? いや一夜漬けでもなんでもいけるかもしれない。何せ小学一年生のテストであればそれほど難しいこともないはず……?
 だが難しいと凛花ちゃんも思っているからこそこうして依頼してきたのだろう。まさに神頼みで。
 それが分かっていたからこそ、左右も無理だと言っていたのか……。いやしかし。

「凛花ちゃん頑張って。今から家に帰って今日、明日で勉強しまくるんだ。100点を取るのは不可能なんかじゃないはずだよ」

 僕は思わず握りこぶしを作りながら、そんな風に力説してしまった。小学生の女の子相手に真剣と書いてマジだ。
 凛花ちゃんは僕の熱意に押されたのか、そもそも馴染みのない人間だからか、明らかに引いている。

「新聞は明日の朝には凛花ちゃんのために依頼欄の内容だけ付け足しておくから、朝学校に行く前か終わってからでも見に来てね。勉強で分からないところがあれば明日神社に来てくれたら教えるし」
「本当?! ありがとう、お姉さん!」

 凛花ちゃんは嬉しそうにみーこさんの手を握ってぴょんぴょんと飛び跳ねている。僕のことなど置き去りにして。

「じゃあテスト頑張ってね!」
「うん、ありがとう。頑張るね!」

 凛花ちゃんは笑顔で大きく手を振りながら駆けて行った。そんな凛花ちゃんの姿を見送り、姿が見えなくなったところで手を振るのをやめた。

「明後日とは、なかなか急でしたね」
「ですね……」
「私これから神社に戻って、あやかし新聞を更新してきます。凛花ちゃんの依頼内容の返事を追加するだけなのですぐなんですけど、左右にもう少し詳しくなんて書いたらいいのかも相談したいので」
「あっ、それ、僕も一緒にいてもいいですか?」

 左右に会いたくはないが、左右がなんて言うつもりなのかが気になったからだ。

「本当ですか? ぜひ来てください!」

 みーこさんは僕の手をぎゅっと握りしめて、最上級のスマイルを僕に向けて放ってくれた。相変わらずスキンシップが多いみーこさんに僕は思わず胸のときめきが聞こえやしないかと心配してしまった。
 まるで思春期の少年のようではないか。手を握られただけでドキドキするなど、大人の男性が起こす反応ではない。と思う一方で、久しぶりに若い女性から、不意に触れられては致し方ないだろう。と自分に言い訳をしながら、僕たちは再び神社へと向かった。