「それはそうと、凛花ちゃん。凛花ちゃんはどうしてみーちゃんが飼いたいの? みーちゃんてこの間言ってた猫のことだよね?」
「そうなの。ママが猫を飼うのは反対なんだって。面倒見きれないだろうからって」
凛花ちゃんは悲しそうにうなだれた。唇をアヒルのように尖らせながら、ランドセルの肩ひも部分をぎゅっと握りしめて。
反対する理由はそんなところではないかと思っていた。面倒見れないからか、アレルギーを持ってるかどちらかだろうと。
「そうだったんだね……今はみーちゃんどこにいるのかな?」
「みーちゃんは家の物置の中に隠してるの。だから朝と夜にこっそりご飯とミルクをあげに行ってるの」
「そこはお母さんに気づかれないの?」
「うん、普段使ってないから大丈夫だと思う」
凛花ちゃんはたくましく笑った。なんだか凛花ちゃんは、まだ小学一年生だというのに、みーちゃんに対して強い使命感を帯びているように思える。
これだけ真剣に思っているのなら、途中放棄なんてありえないんじゃないか。そう思いたいところだが、子供が過ごす時間と僕たち大人が過ごす時間は差がある。子供は体がどんどん急成長していくように、気持ちもどんどん変わっていく生き物でもある。だからこそ今は確固たる信念を持っているように見えたとしても、それは簡単に揺らぐ。大人よりも格段に早く、簡単に気持ちは流れてしまう。凛花ちゃんのお母さんはみーちゃんを飼わないと言っているのはそういう理由なのだろう。
でも100点を取れば飼うと言ったにも関わらず、その約束を守らないというのは話が別ではないだろうか。子供相手とは言え、約束は約束だ。守ってもらわなければ。
「凛花、次のテストで100点取れるかなぁ? この間テストした時、凛花55点だったの」
「大丈夫。凛花ちゃんの依頼は今占ってるところだけど、たとえ難しい事だとしても、頑張ろうね。お姉ちゃんも凛花ちゃんのために毎日お祈りするから。うちの神社は学業にも良いんだよ」
「そうなの!? じゃあ凛花のために神様にお祈りしてくれる?」
「もちろん!」
凛花ちゃんの曇っていた表情はみーこさんの言葉によって晴れ晴れとしている。みーこさんは細い小指を差し出し、凛花ちゃんと指切りをした。
ああ、みーこさんは神社の巫女として生まれるべくして生まれた神の御子なのかもしれない。さっきまでは神社などにおらず会社で働けばきっとみーこさんの今持っている能力とまだ目覚めていない能力が開花されるだろうと思っていたが、僕が浅はかだったようだ。神の子であれば神社にいるのが最もふさわしいのだ。神の子であれば、なんでも卒なくこなせて当たり前ではないか。
僕は二人が指切りげんまんの歌を歌いながら指を切るまでの間、そっと両手を合わせて、みーこさんを拝んだ。二人には気づかれないように、こっそりと。
「そうなの。ママが猫を飼うのは反対なんだって。面倒見きれないだろうからって」
凛花ちゃんは悲しそうにうなだれた。唇をアヒルのように尖らせながら、ランドセルの肩ひも部分をぎゅっと握りしめて。
反対する理由はそんなところではないかと思っていた。面倒見れないからか、アレルギーを持ってるかどちらかだろうと。
「そうだったんだね……今はみーちゃんどこにいるのかな?」
「みーちゃんは家の物置の中に隠してるの。だから朝と夜にこっそりご飯とミルクをあげに行ってるの」
「そこはお母さんに気づかれないの?」
「うん、普段使ってないから大丈夫だと思う」
凛花ちゃんはたくましく笑った。なんだか凛花ちゃんは、まだ小学一年生だというのに、みーちゃんに対して強い使命感を帯びているように思える。
これだけ真剣に思っているのなら、途中放棄なんてありえないんじゃないか。そう思いたいところだが、子供が過ごす時間と僕たち大人が過ごす時間は差がある。子供は体がどんどん急成長していくように、気持ちもどんどん変わっていく生き物でもある。だからこそ今は確固たる信念を持っているように見えたとしても、それは簡単に揺らぐ。大人よりも格段に早く、簡単に気持ちは流れてしまう。凛花ちゃんのお母さんはみーちゃんを飼わないと言っているのはそういう理由なのだろう。
でも100点を取れば飼うと言ったにも関わらず、その約束を守らないというのは話が別ではないだろうか。子供相手とは言え、約束は約束だ。守ってもらわなければ。
「凛花、次のテストで100点取れるかなぁ? この間テストした時、凛花55点だったの」
「大丈夫。凛花ちゃんの依頼は今占ってるところだけど、たとえ難しい事だとしても、頑張ろうね。お姉ちゃんも凛花ちゃんのために毎日お祈りするから。うちの神社は学業にも良いんだよ」
「そうなの!? じゃあ凛花のために神様にお祈りしてくれる?」
「もちろん!」
凛花ちゃんの曇っていた表情はみーこさんの言葉によって晴れ晴れとしている。みーこさんは細い小指を差し出し、凛花ちゃんと指切りをした。
ああ、みーこさんは神社の巫女として生まれるべくして生まれた神の御子なのかもしれない。さっきまでは神社などにおらず会社で働けばきっとみーこさんの今持っている能力とまだ目覚めていない能力が開花されるだろうと思っていたが、僕が浅はかだったようだ。神の子であれば神社にいるのが最もふさわしいのだ。神の子であれば、なんでも卒なくこなせて当たり前ではないか。
僕は二人が指切りげんまんの歌を歌いながら指を切るまでの間、そっと両手を合わせて、みーこさんを拝んだ。二人には気づかれないように、こっそりと。