「左右って本来人には見えない存在だからか、結構淡白に見える時もあるんですよね。でも左右は淡白なんじゃなくって、必要以上に手を差し伸べないようにしてるんじゃないかって、最近は思うんです」
「必要以上に……?」
「はい。探し物は別として、本来依頼そのものを解決するのは私たちじゃなくって、本人だからって」
「ううーん」

 なんだか難しいな。そうだと言われれば確かにそうかもしれない。みーこさんはまだ若いのにしっかりと考えてるんだなぁ、なんて僕は感心してしまった。今はそこに感心している場合ではないのだが。
 ひとまずそうなると——。

「僕たちは一体、何をしたらいいんでしょうか?」
「あはっ、ですよね」

 素朴な疑問に、みーこさんは笑った。お手上げだと言いたげに。

「ひとまず凛花ちゃんに会いに行きましょう。依頼を受理したことだけでも伝えに行くのは普段からの習慣でもありますから」

 そう言って、みーこさんはペースが落ちていた歩調を早めた。


  ◇


「あっ、彼女が凛花ちゃんですよ。おーい、凛花ちゃーん」

 小さな学校。森の中にひっそりとあるこの小学校からランドセルを背負って出て来た女の子。女の子は黄色い帽子を被り、二つに結んだ髪が帽子から飛び出している。
 女の子はみーこさんの声に気がついた様子で、俯きながら歩いていた顔を上げた瞬間、パッと表情が華やいだ。

「巫女のお姉さん!」

 はつらつとした様子でかけてきた凛花ちゃんは、さっきまで一瞬思いつめていたように見えたのが嘘のように笑っている。

「今朝依頼の手紙を松の木の麓にくくりつけてくれたよね? ちゃんと受け取ったよ」
「本当? じゃあ神様は凛花のお願い聞いてくれるかなぁ?」
「今占ってるところだからもう少しだけ待ってね。結果は新聞に貼り出すから見に来てね」
「うん! 楽しみに待ってるね」

 無垢な笑顔をみーこさんに向けている様子を見ていると、なぜか僕が罪悪感を覚える。左右が無理だと言ったのだ。貼り出される結果を見て、凛花ちゃんは泣いてしまわないだろうか。
 僕は女性の涙にめっぽう弱い。幼いとは言え、やはり女性が泣く姿は見ていても楽しいものではない。

「ところで、お兄さんは誰?」

 僕へと向ける視線が、不審者を見るような目だ。凛花ちゃんのお母さん、初めて会う人は怪しい人だと疑いなさいと凛花ちゃんに教えているのかもしれない。こんな世の中だ。それも致し方ないだろう。むしろ凛花ちゃんのお母さん、その教育はきちんと凛花ちゃんの中に根付いていますよ。と教えて上げたくなるほど、凛花ちゃんの瞳は”ザ・不信感”が漏れ出まくっていた。

「このお兄さんは新聞部の一員なの。私を助けてくれる仲間なんだよ」

 みーこさんの言葉を聞いて、一瞬で疑いの目が和らいだ。なんだかその様子にホッとする。どうやら僕は、純真無垢な子供に邪険に扱われるのはまだ慣れていないらしい。