子供らしい歪な文字が並んでいる。文字の大きさも大小異なり、何度か書き直したような跡も見受けられる。

「このみーちゃんとは、一体……?」
「私が思うに、たぶん猫のことだ思うんです。先日凛花ちゃんが学校の校門で子猫を見つけたって言っていたので」
「なるほど……」

 この場合はどうやって解決するつもりなのだろうか。
 前回、キヨさんの願い事に関しては手伝ったが、みーこさんに新聞づくりを手伝ってと言われた件に関してはすでに断っている。だから小学生女子のお願い事は僕にとっては他人事だ。

「佐藤さん、私に力を貸してくださいませんか……?」

 みーこさんは僕の手を両手で包み込むように握りしめ、上目遣いでそう言った。
 まっ、まずい。みーこさん、そのお願い攻撃は僕には強力すぎる……! ほとばしる僕の血潮が、高まる心音が、僕の判断能力を鈍らせようとしているみたいだ。

「今回の依頼は左右でどうこうできるものでもないと思うんです」

 確かに、今回のはひ弱な神通力でどうにかできるようなものではない。できることといえばただのアドバイスくらいではないだろうか。完全におみくじに書かれている学業部分と一致する。
 努力すれば実るだろう。とか、険しい道のりだが、叶わないことはない。とか。けれどこの子の手紙の内容からはそういったアドバイスが必要というよりも、みーちゃんを飼うために100点を取らなければならないのだから、根底の改善には至らない。

「その、僕にお手伝いできることなのでしょうか? この内容としては……」
「できます! 佐藤さんと私でならきっと!」

 強い眼差しで力強く僕の手を握り続けるみーこさん。その麗しさに僕は完全に、ほだされた。

「わかりました。僕にできることであれば最善を尽くしましょう」
「ありがとうございます!」

 みーこさんの瞳は一気に輝き、力強く握られていた手が解放されたかと思えば、今度は僕を力一杯抱きしめた。

「鼻の下が伸びてるぞ、変態」

 左右の侮蔑的な目など、今はどうでもよかった。僕は未だかつて見たこともない天国というものを見たような気がしていたのだから。