「それは一般的に変態と言うんだ。覚えておくといい、変態野郎」

 みーこさんの背後からぬっと現れたのは、悪鬼的存在のねずみ小僧だ。

「誰がねずみ小僧だ。祟るぞ」

 ねずみ小僧は僕を睨みつけながら、部屋の中に入っていく。祟るぞとは神使が言う言葉ではないと思いながらも、殴られるよりかはましか、と思い直す。最近の左右は僕に暴言を吐くものの、殴ってくる様子はない。
 もしかしたら本当に祟っているのかもしれないが、今のところ祟られている効果を実感していないから、それならこっちの方が断然いい。実際に左右の神通力とやらはチンケなものだ。だからきっと僕を祟っても大した効果は得ないのだろう。

「……お前、本当に祟るからな。怪我に気をつけるんだな」
「左右、佐藤さんになんてこと言うの! あなたあくまで神使でしょ」

 みーこさんは今日も麗しく優しい女神な様子で、左右を叱咤してくれた。僕は神使ではないが、紳士だ。紳士らしく子供の言うことなど気にも止めないといった様子で「気にしていませんよ」と爽やかにあしらった。
 たとえ心の中では般若のような顔をして怒り狂っていようとも。

「ところで、新しい依頼とはどういうものだったのですか?」
「そうだ! どうぞこちらに来てください」

 みーこさんは僕の手を掴んでちゃぶ台のあるあの部屋まで駆けていく。不意打ちに手を握られたりすると、思わず僕の心臓が不躾にも飛び跳ねてしまう。
 だけどそんなことはおくびにも出さないように真摯な表情を崩さずに、僕は案内されるがままに部屋に入った。

「今日の依頼は凛花(りんか)ちゃんからなんです」
「凛花ちゃん?」
「はい、村の小学校に通っている女の子です。うちにもよく学校帰りに顔を出してくれたりするんです」
「へぇ」

 小学生からの依頼か。ますますあやかし新聞とは学級新聞のように思えてくるな。

「その凛花ちゃんの依頼内容はどう言うものだったんですか?」

 僕が本題に入ると、みーこさんはずいっとノートの切れ端であろうメモを僕に向けて差し出した。
 おみくじの紐に括り付けていたのであろうそれは、くしゃくしゃにしわがよっている。それを綺麗に伸ばして中身を確認すると——。